日本でもおなじみのタバスコは、アメリカのマキルヘニー社という会社がつくっている唐辛子・塩・酢からなる調味料だ。マキルヘニー社は、ルイジアナ州のエイブリー島にある。タバスコには、このエイブリー島で採掘された岩塩が使われている。

タバスコをつくるとき、塩は二つの使われ方をする。ひとつは味つけだ。唐辛子と塩のペーストをつくって、樽のなかで熟成させる。塩が持っている発酵を助ける力が働いて、唐辛子のうまみが引き出される。もうひとつがユニークで、樽の密封に用いられる。樽に蓋をするとき、蓋の上にびっしりと塩を敷き詰める。塩の湿気を吸いやすい性質を利用して、湿気を含んだ塩でしっかりと樽を密閉するのだ。こうして唐辛子ペーストは樽のなかで3年間熟成される。熟成した唐辛子ペーストに酢を加え、さらに30日間熟成させて完成となる。

エイブリー島で産業として岩塩採掘が行われるようになったのは、1862年にJ.M.エイブリーがこの地で岩塩を発見したことがきっかけとなっている。そのとき岩塩は、地下13フィート(約4メートル)という浅い地点にあったという。採掘開始当初は南北戦争の最中で、塩は南軍に提供された。

1899年にはインターナショナル・ソルト・カンパニーが採掘を始めた。地下550フィート(約168メートル)まで掘り進め、ラバや鉄路を使って採掘した塩を市場へ運ぶようになった。同社の採掘が100年近く行われたことで、地下深くに巨大な空洞ができていった。採掘は現在も続いている。

エイブリー島岩塩坑の内部(1930年)
(写真提供:State Library of Louisiana)

青木 然(たばこと塩の博物館学芸員)

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