世界の各地には、塩湖と呼ばれる塩分の濃い湖があります。南アメリカ・ボリビアのウユニ塩湖などが有名ですが、塩湖は、陸に閉じ込められた海水が岩塩に変化する途中の姿だと考えられており、塩湖で採れる塩は湖塩と呼ばれています。

アフリカにも各地に塩湖があります。例えば、ジブチのアッサル塩湖や、エチオピアのアサール塩湖では、天日で結晶した湖塩が、現代まで採取されています。

現在の日本では、ソーダ工業用の塩を中心とする塩の二大輸入ソースはメキシコとオーストラリアですが、これらの国に大規模な天日塩田がつくられたのは比較的近年のことです。

日本では、大正時代以降ソーダ工業が発達し、それに伴い塩の需要も増えてきました。そして国産の塩や、近隣のアジア諸国からの塩だけでは足りなくなったので、現在のソマリア、シブチ、エチオピア、スーダンなどの紅海沿岸からも塩が輸入されるようになりました。

これらの塩は、日本から見て遠方から来るので、インドや地中海方面などの塩と合わせて「遠海塩」と呼ばれていました(一方、近隣のアジア諸国などの塩が「近海塩」と呼ばれました)。

紅海沿岸の塩は、メキシコやオーストラリアが安定的な輸入ソースとして確立していくにつれ、次第に輸入数量が減り、昭和50年代に入ると、紅海方面からの大規模な塩の輸入は行われなくなりました。しかし、それまでは、遠い紅海沿岸の国々と日本とは、塩によってつながっていたのです。

 

参考文献:『塩 地球からの贈り物』片平 孝、『日本ソーダ工業百年史』日本ソーダ工業会

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